税制非適格ストックオプション(1円SO)を発行した場合、企業側では会計処理がどのように行われるかを正しく理解しておく必要があります。
本記事では、ストックオプション付与から行使・失効までの流れを、会計処理の観点から整理します。
1 会計処理の前提となる条件
- 権利行使価額:1
- ストックオプションの公正な評価額:900
- 付与から権利確定までの期間:3年
- 権利行使可能期間:3年~15年
この前提に基づき、会計上の処理を確認します。
2 付与日から権利確定日まで、公正価値を期間按分して費用計上
ストックオプションは、役員や従業員に対する株式報酬として扱われます。
そのため、権利が確定するまでの期間に応じて、費用を計上し、新株予約権を認識します。
公正評価額900を3年間で按分するため、1年あたりの費用計上額は300となります。
● 1年目
株式報酬費用 300 / 新株予約権 300
● 2年目
株式報酬費用 300 / 新株予約権 300
● 3年目
株式報酬費用 300 / 新株予約権 300
※付与日から権利確定日までの期間に応じた費用計上が必要
3 権利行使時(新株発行時):新株予約権を資本金等に振替える
権利行使が行われ、新株が発行されると、次のような仕訳となります。
● 権利行使時
預金 1 + 新株予約権 900 / 資本金等 901
- 行使価額1が払い込まれ
- 新株予約権900を取り崩し
- 合計901が資本金等に振り替わる
という流れです。
4 権利行使されず失効した場合:新株予約権戻入益を計上
行使可能期間満了時に権利が行使されなかった場合、新株予約権は失効します。
その場合の仕訳は次のとおりです。
● 失効時
新株予約権 900 / 新株予約権戻入益 900
5 非上場会社の評価額算定に関する補足
次の点が非常に重要な実務ポイントです。
非上場会社では公正な評価額の算定が困難なため、
割当契約時の株価と権利行使価額の差額(=現在行使した場合の価値)を用いることが認められている。
つまり、非上場企業の場合は、必ずしもオプション評価モデル等を用いる必要はなく、
株価と行使価格の差をもって合理的な見積りとできる、という扱いです。
6 まとめ、税制非適格SOの会計処理は「期間按分→行使→失効」の3段階
税制非適格ストックオプションの会計処理は、概ね次の流れで整理できます。
- 付与後〜権利確定まで
公正価値を期間按分し、株式報酬費用と新株予約権を計上 - 権利行使時
新株予約権を資本金等に振替え - 失効時
新株予約権戻入益を計上
また、非上場企業では、公正評価額の算定方法として「株価と行使価額の差額」を用いることができる点も重要です。
※本記事は一般的な制度説明であり、具体的な会計処理や税務判断には、公認会計士・税理士等の専門家への相談が不可欠です。
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