ストックオプション(SO)には「税制適格」と「税制非適格」があり、課税関係に大きな違いがあります。
税制適格SOは行使時の課税がなく、売却時に譲渡所得として20.315%課税されますが、税制非適格SOは権利行使時点で給与課税が発生し、税負担が重くなるのが特徴です。
それでも、制度設計上あえて「非適格SO」を採用するケースも存在します。
1. 税制非適格SOの課税関係
- 課税タイミング:①権利行使時、②株式売却時の2段階
- 権利行使時:株価 − 行使価額 の差額が給与所得として課税(累進税率 最大55.945%)
- 株式売却時:売却価額 − 権利行使時株価 の差額が譲渡所得として20.315%課税
→ つまり「2重課税構造」となり、適格SOに比べて税務上は不利となります。
2. あえて非適格を選ぶケース
- 税制適格の厳しい要件を満たせない場合
(例:対象者が社外協力者、年間行使価額が上限超過 など) - 柔軟な設計が必要な場合
- 行使条件に業績連動条項を盛り込みたい
- 株式の譲渡制限を緩和したい
- 即時インセンティブを重視する場合
→ 権利行使後すぐに株式を売却し利益を実現する設計
3. 実務での留意点
- 課税負担の説明:従業員・役員への付与時に、適格SOとの違いを丁寧に説明する必要
- 会計処理:非適格SOは行使時に給与費用を認識するため、人件費の増加がP/Lに反映される
- IPO審査への影響:制度の設計意図と対象者の範囲が合理的に説明できるかどうかがポイント
4. 適格SOとの比較(まとめ)
項目 | 税制適格SO | 税制非適格SO |
---|---|---|
課税タイミング | 株式売却時のみ | 権利行使時+売却時 |
課税区分 | 譲渡所得(20.315%) | 給与所得(最大55.945%)+譲渡所得 |
要件 | 厳格な法定要件あり | 柔軟に設計可能 |
メリット | 税負担が軽い | 制度設計の自由度が高い |
デメリット | 要件を満たさないと非適格化 | 税負担が重い |
まとめ
税制非適格ストックオプションは、課税上は不利ですが、柔軟な設計や対象者拡大といった観点から実務では一定のニーズがあります。
IPO準備企業では、税制適格SOとの併用も多く見られ、付与対象者ごとに適切な制度を選び分けることが重要です。
発行前に、税務・会計・法務の三方向から制度設計を検討することが不可欠です。