税制非適格ストックオプション(いわゆる1円SO)は、税務上「いつ」「どの段階で」「どの所得区分として」課税されるのかを理解することが最も重要です。
本コラムでは、3つの課税タイミング(付与時・権利行使時・株式売却時) を軸に制度のポイントを整理します。
なお本記事は一般的な制度説明であり、具体的な税額計算や判断は税理士など専門家への確認が必要です。
1 税制非適格SOの課税は3段階で検討する
税制非適格SOにおける個人課税を次の3ステージに整理しています。
- 付与時(課税なし)
- 権利行使時(給与所得または退職所得)
- 株式売却時(譲渡所得)
この順に課税関係を見ていきます。
2 付与時通常は課税なし
税制非適格SOは多くの場合 無償付与ですが、付与の時点では一般に課税関係は生じません。
理由は明確で、
- ストックオプションには通常「譲渡制限」が付されており
- 付与された段階では経済的利益が実現していない
と整理されるためです。
● 注意点
譲渡制限を外すと、その時点で課税が発生する。
付与時の非課税は「譲渡できない」ことが前提である点を押さえる必要があります。
3 権利行使時、最も税負担が重くなるポイント
税制非適格SOの最大の特徴は、権利行使時に給与所得課税が生じることです。
課税額は次の算式で求められます。
(権利行使時の株価 − 権利行使価額)× 株式数
ここが税制適格SOとの最大の違いであり、税制非適格SOのデメリットとして元記事でも強調されています。
● 所得区分
- 原則:給与所得(最大で約55%の累進課税)
- 例外:退職時のみ行使可能な設計 → 退職所得として取り扱われる
退職所得扱いとなる場合、2分の1課税の適用により、税負担が大幅に軽減されることが特徴です。
4 株式売却時、譲渡所得として課税
権利行使をして取得した株式を売却すると、次の算式により譲渡所得が生じます。
(売却価額 − 権利行使時の株価)× 株式数
税率は約20%の申告分離課税。
● ポイント
- 権利行使時点で取得価額は確定する
- 権利行使時の株価が高いほど、売却時の課税所得は小さくなる
- ただし、権利行使時の給与課税が重い点は変わらない
権利行使時と売却時で「2回課税」が生じる点が、税制非適格SOの大きな特徴です。
5 3つの課税タイミングから生まれる実務上の注意点
実務の注意点は次のとおりです。
● 1 キャッシュイン前に税負担が発生する
権利行使時には、株式取得のみで現金収入はありません。
にもかかわらず、給与所得としての税金が先に発生します。
● 2 退職型での利用が多い理由
退職所得扱いが可能な設計は、税負担を合理的に抑えることができるため、
実務では税制非適格SOの多くが「退職型1円SO」とされています。
● 3 適格SOとの比較が不可欠
税制適格SOは「行使時非課税」という大きなメリットがあるため、
どちらを採用するかは企業の報酬設計次第です。
6 まとめ、税制非適格SOは「課税タイミングの理解」が最重要
税制非適格ストックオプションの課税は、
付与時 → 権利行使時 → 売却時
の3段階に整理することで理解が進みます。
- 付与時:通常課税なし
- 権利行使時:給与所得(退職型なら退職所得)
- 売却時:譲渡所得
このように課税が複数段階に分かれることが、税制適格SOとの最大の違いです。
本記事は一般的説明であり、具体的な税務判断を行うものではありません。税額の試算や制度導入の検討にあたっては、税理士等の専門家へご相談ください。
ストックオプションの設計・評価はストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。
