ストックオプション(SO)には、税制上「適格」と「非適格」の2種類があります。
税制非適格SOは、税制適格SOの要件を満たさない場合に該当し、行使時と売却時の2段階課税となるのが大きな特徴です。
設計自由度が高い一方で、課税負担や会計処理の複雑さに注意が必要です。
1. 税制非適格ストックオプションとは
- 税制適格SOの法定要件(租税特別措置法第29条の2)を満たさないストックオプション。
- 発行対象者、行使価額、譲渡制限などの条件を自由に設計できる。
- その代わり、行使時に給与所得課税が発生する。
2. 課税のタイミング
税制非適格SOでは、課税が2段階で発生します。
タイミング | 課税区分 | 課税対象額 | 税率 |
---|---|---|---|
権利行使時 | 給与所得 | (株価 − 行使価額)×株数 | 累進税率(最大55.945%) |
株式売却時 | 譲渡所得 | 売却価額 − 行使時株価 | 一律20.315% |
行使時に課税が生じるため、実際に株式を売却していない段階で納税義務が発生する点に注意が必要です。
3. 税制適格SOとの違い
項目 | 税制適格SO | 税制非適格SO |
---|---|---|
行使時課税 | なし | あり(給与所得課税) |
売却時課税 | 譲渡所得(20.315%) | 譲渡所得(20.315%) |
対象者 | 会社の役員・従業員等 | 制限なし(社外協力者も可) |
柔軟性 | 要件あり | 高い(自由設計可能) |
税制非適格SOは、税負担は重くなるが設計自由度が高いため、外部アドバイザー・社外取締役・コンサルタントなど、税制適格要件外の対象者に付与されるケースが多く見られます。
4. 実務上の留意点
- 行使時に給与課税が生じるため、源泉徴収義務が発行会社に発生する。
- 株価上昇局面では課税額が大きくなり、行使資金+納税資金の準備が課題となる。
- 税務上の扱いは明確だが、インセンティブ効果を高めるには設計時の調整が不可欠。
5. 会計処理の考え方
- 公正価額を基準に株式報酬費用を認識。
- 権利確定期間がある場合は、その期間に応じて費用を按分して計上。
- 行使時点での株価と行使価額の差額は、従業員への報酬とみなされる。
まとめ
税制非適格ストックオプションは、行使時課税というデメリットがある一方で、対象者・条件設計の自由度が高い制度です。
適格要件に該当しない外部人材への報酬設計や、柔軟なインセンティブ制度の構築に有効です。
ただし、課税・会計処理・資金負担を十分に考慮し、制度設計の段階で税理士・会計士等の専門家と連携することが重要です。