ストックオプション(新株予約権)は、付与時点で一定の条件を前提に設計されますが、従業員の退職や契約終了により、その前提が崩れる場面があります。
退職を理由としてどのように権利を“消滅”させるのかは、制度設計を行う企業にとって非常に重要な論点です。
本コラムでは、退職時に想定されるストックオプションの扱いについて、実務でよく使われる整理方法を解説します。
1 退職とストックオプションの関係は「自動消滅ではない」
まず前提として、
退職=権利が当然に消滅する、という法律はありません。
そのため、退職時の扱いは、付与要項・契約書でどう定めてあるかによって決まります。
ポイントは次の2つです。
- 「退職したら行使できない」と書いてあるかどうか
- 「会社が取得する」「自動的に失効する」などの条項があるかどうか
記載が曖昧な場合、退職後も権利が残る余地が生まれます。
2 ストックオプションの“消滅方法”は一般に3類型
退職時の扱いは、大きく次の3パターンに整理されます。
(※以下は他社記事の構造に従い、内容は独自整理)
2-1 (1)放棄
権利者本人が「権利を行使しません」と表明する方法です。
特徴
- 権利者の意思表示に基づくため、書面で残すことが多い
- 契約内容を変更するものではない
注意点
- 本人の同意が前提であり、強制力はありません
- 退職時に必ず放棄するとは限らないため、制度としての確実性は高くない
2-2 (2)行使不能(失効)
退職を条件として「退職したら行使できない」と付与要項に定める方法です。
特徴
- 最も多く見られる実務パターン
- 契約上の条件に基づき“行使できなくなる”=消滅と同視
注意点
- 文言が曖昧だと「退職後も行使できるのでは?」と争いになりやすい
- 行使期間中の退職は特に紛争リスクがある
2-3 (3)取得条項付きSO
付与時点で「一定の事由が生じたら、会社が権利を取得する」と定める方式です。
特徴
- 契約で明確に定めているため最も紛争が少ない
- 取得する時点と対象が明確になり、扱いがはっきりする
注意点
- “付与時点”で取得条項が組み込まれている必要がある
- 途中追加はできないため、最初の設計が重要
3 実務で選ばれる方式はどれか
企業の制度設計では、以下の考え方が一般的です。
- 確実に処理したい → 取得条項方式
- コストをかけず柔軟に対応したい → 行使不能方式
- 個別対応・事後同意を想定 → 放棄方式
特にスタートアップは、今後の人材流動性を見据え、
付与要項の段階で「退職時の扱い」を明確に書き込むことが重要です。
4 退職時に注意すべき論点
4-1 条項によっては「都度処理」が必要
行使不能や放棄方式では、退職が発生するたびに個別判断が必要になるため、運用負荷は高くなります。
4-2 状態が不明確な権利を残すと、後続の資本政策に影響
「退職者のオプションがまだ残っているのか?」という不明確さは、
次回のSO発行や株主説明の際に問題になります。
4-3 取得条項方式は最も整理しやすい
取得条項により一定事由で自動的に権利が“整理される”ため、複雑な個別処理が不要です。
5 結論、退職時のSO消滅は“契約設計がすべて”
ストックオプションは「退職したら自然に消える」わけではありません。
会社が望む処理方法を実現するには、付与要項・契約書の段階で必ず明記しておくことが前提です。
企業側は、
- 放棄
- 行使不能
- 取得条項
この3つのどれを中心にするかを明確化し、運用の手間や紛争リスクを踏まえてスキームを選択する必要があります。
