インセンティブ報酬とは?
インセンティブ報酬とは、企業の短期もしくは中長期の業績や株価に連動して役員や従業員に支給される報酬のことです。
インセンティブ報酬は、モチベーションの向上や優秀な人材の流出防止などのメリットがあり、東証上場会社のうち、何らかのインセンティブ付与に関する施策を実施している会社は76.5%を占めています。
(参考:東京証券取引所「2021年コーポレートガバナンス白書」)
近年、インセンティブ報酬の一部である株式報酬制度の普及が進んでいます。
この背景には、
- コーポレート・ガバナンスコートや経済産業省の『「攻めの経営」を促す役員報酬⁻企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引き-』の公表により「攻めの経営」が推奨されていること。
- 2017年の税制改正により役員報酬の体系が整備されてきたこと
が挙げられます。
「攻めの経営」とは?
攻めの経営とは、経営者が中長期的に企業価値を高めるための施策に積極的に取り組み、その結果がインセンティブに反映されることにより、経営者がより意欲的に経営に取り組むというプラスのサイクルを回し、ローリスク・ローリターンの経営から脱却し、「稼ぐ力」を向上させることです。
日本企業の役員報酬は、諸外国に比べると業績が反映されるインセンティブ報酬(変動報酬)の割合が低く、基本報酬(固定報酬)の割合が高いと言われています。
(参考:経済産業省『「攻めの経営」を促す役員報酬⁻企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引き-』)
インセンティブ報酬の分類
インセンティブ報酬はその付与方法やタイミング、条件によって分類することができます。
主な種類を付与方法と付与タイミングにより整理すると以下のようになります。
種類別の特徴
それぞれの報酬制度について、付与方法別に以下にまとめました。
新株予約権
ストック・オプション(SO)とは、あらかじめ定められた「価格」「数」「期間内」に自社の株式を取得(購入)することができる権利のことです。
権利行使価格と売却時の株価との差をキャピタルゲインとして報酬を得る仕組みです。
また、ストック・オプションは、SO発行時に付与者(役員・従業員)が発行会社に発行価額を払い込むことで権利が付与される有償SOと、無償で権利が付与される無償SOで大きく分類することができます。
【有償SO】
有償SOとは、SO発行時に付与者(役員・従業員)が発行会社に発行価額を払い込むことで権利を取得できるSOです。
付与対象者はSOを購入しているため、税務上金融商品とみなされ、譲渡所得となり税率が抑えられるという特徴があります。
【信託型SO】
信託型SOとは、信託契約と有償SOを組み合わせたSOです。
事後的に付与対象者を決めることができるのが最大の特徴です。
【税制適格SO】
税制適格SOとは一定の税制要件(適格要件)を満たしたSOのことで、 課税が売却時点まで繰延べられるなどの優遇措置を受けられることが特徴です。
【1円SO】
1円SOとは、税制非適格SOを活用したストック・オプションで、株式報酬型SOとも呼ばれます。
権利行使価額を1円など低い価格に設定し、退職金の代用として導入されることが多いのが特徴です。
株式
【PS/PSU】
業績連動型株式(Performance Share)は、PSとも呼ばれ、事前に付与対象者に株式が付与されますが、一定期間経過後の業績目標を設定し、その達成度合いに応じて譲渡制限が解除される株式のことです。
PSU(Performance Share Unit)とは、事後的に交付される業績連動型株式のことです。
【RS/RSU】
譲渡制限付き株式(Restricted Stock)は、RSとも呼ばれ、事前に付与対象者に株式が付与されますが、条件達成までは譲渡ができない株式のことです。
RSU(Restricted Stock Unit)とは、 事後的に交付される譲渡制限付き株式のことです。
ユニットとは?
ユニットとは、ポイント制度のようなものです。一定の条件を満たした場合にポイントが付与され、保有するポイントに応じて現金や株式を付与する仕組みで、事後交付型に分類されます。
PSUやRSUはユニットを利用したPS、RSのことです。
【株式交付信託】
自社の株式を取得することで、従業員や役員の財産形成や、役員へのインセンティブ、従業員の福利厚生の充実を促す報酬制度で、業績連動型の一種であり、信託を通じて自社株式を給付するものです。
現金
【ファントムストック】
ファントムストックとは、疑似的な株式を対象者に付与したものとし、業績条件を達成した際に、その株価相当を金銭で対象者に支給するという制度のことです。
【SAR】
SAR (=Stock Appreciation Right)は、ストックアプリシエーションライトとも呼ばれ、ファントムストックと同様の仕組みで権利行使価格等を払込むことなく、株価の値上がりした差分を金銭で受け取ることができる制度のことです。
まとめ
今回は、インセンティブ報酬について基本となる背景や種類などをご紹介しました。
今後もコラムにて、インセンティブ報酬の各種類について解説を行ってまいります。
インセンティブ報酬制度を導入することには様々なメリットが期待できるため、自社におけるインセンティブ報酬を導入する目的と効果を明確にし、経営戦略に合った報酬プランを検討してみてはいかがでしょうか。
ストックオプションアドバイザリーサービスでは、ストック・オプションや株式報酬制度等の設計・導入についてアドバイザリー業務 を行っております。
ご不明点やご質問、もっと詳しく知りたい、導入を検討している方は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。