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ESOPとストックオプションは「誰が株式を取得するのか」が違う

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株式報酬制度

従業員向けの株式インセンティブ制度として、ESOPとストックオプションが比較されることがあります。両者はいずれも従業員のモチベーション向上や企業価値向上を目的として導入されますが、制度の構造は大きく異なります。

前回は「株式を受け取るか、株式を取得する権利を受け取るか」という観点で整理しました。本稿では別の視点として、株式を取得する主体(誰が株式を保有するのか)という観点から両制度の違いを整理します。

ESOPは「信託」が株式を保有する制度

ESOPは、従業員に株式を給付する仕組みとして導入される制度であり、日本では信託を利用する仕組みが採用されるケースがあります。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 会社が信託銀行と信託契約を締結する
  2. 信託が市場などから自社株を取得する
  3. 一定条件を満たした従業員に株式を給付する

この仕組みでは、株式は最初から従業員が取得するのではなく、信託が株式を保有する状態から制度が運用される点が特徴です。

その後、勤続年数や業績などの条件を満たした従業員に株式が交付される形になります。

ストックオプションは「従業員本人」が株式を取得する

一方、ストックオプションは会社法上の新株予約権を利用する制度です。

この制度では、従業員は次のような流れで株式を取得します。

  1. 従業員に新株予約権が付与される
  2. 権利行使期間内に権利を行使する
  3. 行使価額を払い込んで株式を取得する

つまり、株式は信託などを経由せず、従業員本人が権利行使によって直接取得する構造になります。

この点がESOPとの大きな違いです。

株式取得までのプロセスの違い

両制度の構造を整理すると次のようになります。

観点ESOPストックオプション
株式取得主体信託が株式を保有従業員本人
株式取得方法信託が株式を取得し給付権利行使により取得
従業員の負担制度により異なる行使時に購入資金が必要
制度の性格福利厚生・資産形成成長インセンティブ

株価変動リスクの違い

株式取得主体の違いは、従業員のリスクにも影響します。

ESOPでは株式そのものを保有する制度であるため、株価が下落した場合には資産価値が減少する可能性があります。

一方、ストックオプションでは株価が行使価額を下回っている場合には権利を行使しない選択が可能です。

そのため、従業員が負うリスクの構造も両制度で異なります。

制度導入の目的の違い

このような制度構造の違いから、導入目的も異なる傾向があります。

ESOPは従業員に株式を保有させる制度であり、資産形成や長期的な従業員定着を目的として導入されることがあります。

一方、ストックオプションは株価上昇による利益をインセンティブとする制度であり、企業の成長と従業員の利益を結びつける仕組みとして利用されます。

まとめ

ESOPとストックオプションは、いずれも従業員向けの株式インセンティブ制度ですが、その構造は大きく異なります。

ESOPでは信託が株式を保有し、条件を満たした従業員に株式が給付されます。一方、ストックオプションでは従業員が新株予約権を行使することで直接株式を取得します。

制度設計を検討する際には、株式取得主体やリスク構造の違いを理解したうえで、自社の目的に適した制度を選択することが重要です。