ストックオプション(SO)は、未上場段階では「将来のインセンティブ」として比較的柔軟に扱われがちです。しかし、IPO準備に入った途端、ストックオプションは一転して厳密な管理対象となります。
これは、ストックオプションが潜在株式(潜在的に発行され得る株式)として、上場審査・投資家評価の対象になるためです。
本コラムでは、IPO準備の局面でストックオプションがどのように見られ、どの点が確認されるのかを、会社法上の新株予約権整理に立ち返って解説します。
1.IPOにおけるストックオプションの位置づけ
IPO審査では、発行済株式数だけでなく、
- 新株予約権
- 転換社債型新株予約権付社債(CB)
などを含めた潜在株式ベースでの資本構成が確認されます。
ストックオプションは、
- まだ行使されていない
- 株式に転換されていない
という理由で「存在しないもの」として扱われることはありません。
行使されれば確実に株式が発行される権利である以上、将来の株主構成に影響するものとして整理されます。
2.必ず確認される基本資料
IPO準備において、ストックオプションについては、少なくとも以下の資料が確認対象となります。
- 株主総会決議(新株予約権発行決議)
- 募集事項の内容
- 新株予約権割当契約書
- 新株予約権原簿
- 行使状況・失効状況の一覧
ここで問題になるのは、「資料が存在するか」だけでなく、
内容が相互に整合しているかという点です。
3.IPO直前で問題になりやすい論点
(1)決議内容と契約内容の不一致
実務では、
- 株主総会決議には簡略的な記載しかない
- 実際の条件は契約書で細かく定めている
というケースが少なくありません。
しかし、IPO審査では、
新株予約権の内容は決議事項が起点であるため、
契約書のみで条件を補っている場合、説明が困難になることがあります。
(2)失効処理が曖昧なSOの存在
退職者に付与されたストックオプションについて、
- 原簿上は残っている
- 失効通知・失効処理が行われていない
といった状態は、IPO準備では大きな問題になります。
「実態としては行使されない」は理由にならず、
法的に存続しているかどうかが判断基準となります。
(3)潜在株式比率の説明
ストックオプションの発行割合が高い場合、
- 上場後の希薄化
- 既存株主・投資家への影響
について、合理的な説明が求められます。
ここで重要なのは、
発行時点でどのような意図・前提で設計されたかです。
後付けで理由を作ることは難しく、発行当初の整理がそのまま問われます。
4.会社法上の整理がそのままIPO対応になる
IPO準備で確認される内容の多くは、実は新しい論点ではありません。
- 株主総会決議が適切か
- 募集事項が明確か
- 原簿管理がされているか
- 行使・失効が会社法どおり処理されているか
いずれも、本来は新株予約権発行時点で整理されているべき事項です。
IPO対応とは、特別な追加作業ではなく、
「過去の新株予約権管理が適切だったかを精査される工程」と整理できます。
5.IPO準備前に最低限確認すべき点
IPOを見据える企業では、少なくとも次の点は事前に確認しておく必要があります。
- 発行済ストックオプションの一覧化
- 原簿と実態の突合
- 失効対象者の整理
- 決議・契約・原簿の整合性確認
これらは、IPO直前ではなく、準備段階の早期に行うことが重要です。
6.まとめ
ストックオプションは、未上場時には柔軟に見える制度ですが、
IPO準備に入った瞬間から、潜在株式として厳密に評価される法的権利に変わります。
- 行使されるかどうか
- 実際に使われるかどうか
ではなく、
「行使できる状態にあるか」が判断基準です。
IPOを視野に入れる企業にとって、ストックオプション管理は
人事制度ではなく、会社法・資本政策の問題として整理する必要があります。
※本コラムは一般的な制度整理を目的としたものであり、IPO対応や個別のストックオプション整理については、必ず専門家に個別相談のうえ判断してください。
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