会社がストックオプション(SO)を導入する際、会計処理や費用計上の方法は重要なポイントです。特に、どのタイミングでどの金額を計上するのか、上場企業と未上場企業での違い、有償・無償ストックオプションの違いなど、経理・財務担当者が正しく理解しておくべき内容が多くあります。
本記事では、ストックオプションの会計基準について、発行企業の視点から詳しく解説していきます。
ストックオプションの会計処理とは?
ストックオプションは、会社が役員や従業員に対して自社株をあらかじめ決められた価格で取得できる権利を付与する制度です。これにより、従業員のインセンティブとなり、企業の成長を促進する効果があります。
しかし、企業側の会計処理としては、ストックオプションを「費用」として計上する必要があります。特に、以下の2つのポイントが重要になります。
- いくら費用計上するのか?
- いつ費用計上するのか?
ストックオプションの種類や付与条件によって、会計処理の方法が異なるため、次のセクションで詳しく見ていきましょう。
ストックオプションの種類別 会計処理の違い
ストックオプションには、大きく分けて 無償ストックオプション と 有償ストックオプション の2種類があります。さらに、未上場企業か上場企業かによっても会計処理が異なります。
① 無償ストックオプション(税制適格・非適格)
無償ストックオプションとは、従業員が対価を支払うことなく付与されるストックオプションです。会社側では、付与時点で「株式報酬費用」として計上し、期間にわたって費用を配分する必要があります。
- 費用計上額:ストックオプションの「公正価値」が基準
- 費用計上のタイミング:権利確定日までの期間で費用配分
例:無償ストックオプションの会計処理
項目 | 会計処理 |
---|---|
付与時点 | 「株式報酬費用」を計上(期間按分) |
権利確定時 | 費用の計上完了 |
行使時 | 貸方に「新株予約権」として処理 |
失効時 | 貸方に「新株予約権戻入益」を計上 |
② 有償ストックオプション
有償ストックオプションでは、従業員が権利を取得する際に一定の金額を企業に支払います。したがって、会計上は「公正価値から払込金額を差し引いた額」を費用計上することになります。
- 費用計上額:公正価値 - 払込金額
- 費用計上のタイミング:
- 業績条件がない場合:発行時に一括計上
- 業績条件がある場合:権利確定まで按分して計上
例:有償ストックオプションの会計処理
項目 | 会計処理 |
---|---|
付与時点 | 「株式報酬費用」を計上(業績条件がある場合は期間按分) |
権利確定時 | 費用の計上完了 |
行使時 | 「新株予約権」を資本金に振り替え |
失効時 | 「新株予約権戻入益」を計上 |
未上場企業における会計処理のポイント
未上場企業の場合、上場企業とは異なり、ストックオプションの「公正価値」を正確に評価することが難しいため、会計処理が簡略化されることがあります。
主な違い
- 公正価値の評価が困難なため、特例として 発行価額に係る費用計上が免除 されるケースが多い。
- ただし、行使価額が株価よりも低い場合は、その差額(本源的価値)については費用計上が必要。
未上場企業であっても、ストックオプションの付与によるインセンティブ効果を維持しつつ、適切な会計処理を行うことが求められます。
ストックオプションの損金算入について
ストックオプションの税務上の扱いは、税制適格か税制非適格かで異なります。会計上は費用計上が必要ですが、法人税の計算上、損金にできるかどうかは以下のように決まります。
ストックオプションの種類 | 損金算入の可否 |
---|---|
税制適格ストックオプション | 損金算入不可 |
税制非適格ストックオプション | 損金算入可能(給与課税対象) |
有償ストックオプション | 損金算入不可 |
税制適格ストックオプションは、企業の損金にはなりませんが、従業員の税制優遇を受けられるため、企業にとっても優秀な人材を引き留めるメリットがあります。
ストックオプションの仕訳例
ストックオプションの会計処理において、以下のような仕訳を行います。
ストックオプション付与時
(借方)株式報酬費用 ××× (貸方)新株予約権 ×××
ストックオプション行使時
(借方)預金 ×××
(借方)新株予約権 ××× (貸方)資本金 ×××
ストックオプション失効時
(借方)新株予約権 ××× (貸方)新株予約権戻入益 ×××
これらの仕訳を適切に行うことで、財務諸表への影響を正しく把握し、投資家や監査法人の信頼を得ることができます。
まとめ
ストックオプションの会計基準と費用計上のタイミングについて解説しました。
ポイントは以下の通りです。
・ 費用計上額は、公正価値や行使価額との差額に基づいて算定される
・ 費用計上のタイミングは、権利確定日まで按分するケースと一括計上するケースがある
・ 未上場企業の場合、発行価額の費用計上が免除される場合がある
・ 税務上の損金算入の可否は、ストックオプションの種類によって異なる
ストックオプションを導入する際は、会計処理と税務上の扱いを正しく理解し、会社の財務戦略に適した形で活用しましょう。
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