新株予約権はなぜ純資産に計上される?貸借対照表での仕訳方法を徹底解説

企業が資金調達の手段として発行する新株予約権。この新株予約権は、企業の貸借対照表(バランスシート)上で「純資産」に計上されることをご存じでしょうか?

「なぜ新株予約権は純資産なのか?」「負債ではないの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。

本記事では、新株予約権が純資産に計上される理由を、会計上の観点から分かりやすく解説するとともに、具体的な仕訳方法についても紹介します。

新株予約権とは?

新株予約権とは、特定の条件を満たせばあらかじめ決められた価格(行使価額)で企業の株式を取得できる権利のことを指します。

新株予約権を発行することで、企業は将来的な資金調達を図ることが可能になります。新株予約権には以下のような種類があります。

  • ストックオプション(SO):従業員や役員にインセンティブとして付与される新株予約権
  • 社外向け発行:投資家向けに発行し、資金調達を目的とするもの
  • 無償割当:既存株主に対して無料で付与される新株予約権
  • 有利発行:市場価格よりも有利な条件で発行される新株予約権

新株予約権は、行使されると新株が発行されるため、企業の資本金に加えられる可能性があることがポイントです。

新株予約権は貸借対照表の「純資産」に計上される

貸借対照表(バランスシート)とは?

貸借対照表(B/S)とは、企業の財務状況を表す重要な財務諸表の一つであり、「資産」「負債」「純資産」の3つの区分で構成されます。

貸借対照表の基本構成

項目内容
資産現金、売掛金、土地、建物など企業が保有するもの
負債借入金、買掛金、未払金など将来的に支払う必要のあるもの
純資産資本金、利益剰余金、新株予約権など、返済の必要がないもの

新株予約権は「純資産」の一部に分類されます

なぜ負債ではなく純資産なのか?その理由を詳しく見ていきましょう。

新株予約権はなぜ純資産に計上されるのか?

かつて、新株予約権は負債として計上されることもありました。しかし、現在の会計基準では、新株予約権は純資産の一部とされています。その理由は以下のとおりです。

① 新株予約権は返済義務がないため負債ではない

負債とは、企業が将来支払い義務を負うものを指します。しかし、新株予約権は「将来、株式に転換される可能性がある権利」であり、企業が返済する義務はありません。そのため、負債として計上するのは適切ではないと考えられます。

② 権利行使されれば資本金になる

新株予約権が行使されると、保有者は行使価額を企業に払い込むことで株式を取得し、株主となります。つまり、新株予約権は将来的に資本金に転換される可能性がある資金とみなされます。

③ 会計基準の変更による影響

かつては、新株予約権は「仮受金」として負債に計上されていました。しかし、2005年に**企業会計基準第5号(貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準)**が施行され、新株予約権は純資産の一部として扱われるようになりました。

新株予約権の具体的な仕訳方法

新株予約権を発行・行使・失効した際の仕訳について具体例を紹介します。

① 発行時の仕訳(社外向け発行の場合)

条件:

  • 新株予約権1個あたり5,000円
  • 200個発行(合計1,000,000円)

仕訳:

借方(Dr)金額貸方(Cr)金額
当座預金1,000,000円新株予約権1,000,000円

新株予約権発行時は、払い込み金額を「新株予約権」として純資産に計上します。

② 権利行使時の仕訳

条件:

  • 60個分の新株予約権が行使され、当座預金に6,000,000円の払込を受けた
  • 新株を発行し、資本金として計上する

仕訳:

借方(Dr)金額貸方(Cr)金額
当座預金6,000,000円資本金6,300,000円
新株予約権300,000円

行使時には、新株予約権の計上額を取り崩し、資本金に振り替えます。

③ 権利失効時の仕訳

条件:

  • 40個分の新株予約権が失効し、200,000円を特別利益として計上

仕訳:

借方(Dr)金額貸方(Cr)金額
新株予約権200,000円新株予約権戻入益(特別利益)200,000円

新株予約権が失効した場合は、その分を「新株予約権戻入益」として計上します。

まとめ

本記事では、新株予約権が純資産に計上される理由と、具体的な会計処理について解説しました。

  • 新株予約権は、将来的に資本金となる可能性があるため純資産に計上される
  • 過去の会計基準では負債に分類されていたが、現在は純資産として処理される
  • 新株予約権の発行、行使、失効ごとに適切な仕訳処理が必要

会社が資金調達を行う際、新株予約権の発行は重要な選択肢の一つです。資本政策の一環として、新株予約権をどのように活用するか、慎重に検討することが求められます。

ストックオプションや新株予約権の導入をご検討の方は、ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社までお問い合わせください。

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